TEAM INTERVIEW
西谷大蔵
という新しい領域へのチャレンジ

まずALPHABOATという企業のご説明をさせて頂く前にSCデジタルメディアのご説明をさせて頂ければと思います。SCデジタルメディアは住友商事株式会社100%の小会社で、もともと住友商事のメディア事業、コンテンツ事業をやっていたチームで成り立っています。もともとの所属はメディア・エンターテインメント事業部で、この中からスピンオフして出来た会社です。
資本的に住友商事100%ですが、資本的のみならず人事的にも成り立ち的にも、戦略的にデジタルメディアの事業領域における投資やパートナーシップの組成を、住友商事として新しいデジタルの領域でどの様にやっていくかということで作った会社です。
一番の意図としては、専門領域の人材とノウハウ、知見をきちんと集積していきましょうというのがあります。親会社の総合商社の場合、本人の希望に関わらず日本企業の一般的な大企業にもよくあるように、ジョブローテーションが発生し都度担当領域がガラッと変わるということがあり得ます。
一方でSCデジタルメディアという専門部隊を作ったことで、専門性をきちんと担保し、そこに知見も集積をさせながら、なおかつ雇用の形態も本体では出来ないような、よりデジタルの今の業界にあった柔軟な形にしていこうと考えました。
SCデジタルメディアがフォーカスしている事業領域が大きく分けて4つあります。「広告マーケティング事業」「メディア運営事業」「コマース事業」「IPライツ事業」です。その4つの事業領域の中で、ALPHABOATは広告マーケティング事業をメインに、一部残り3つの事業領域に携わっています。
ALPHABOATにおけるメディア事業は、いわゆるオウンドメディアを立ち上げるわけではなく、YouTuberやインスタグラマーなどのクリエーターと共にプラットフォーマーの中など、広義な意味でのメディアも含めてこれを運営する事業を指します。
コマース事業やIPライツ事業ですが、例えばALPHABOATの所属YouTuber「劇団スカッシュ」チャンネル登録者数50万人突破記念でファンイベント兼、グッズ即売会みたいなことをやる際に、コマース事業にも関わるし、ファン感謝のイベントというところでいうと広義な意味でIPライツ事業にも関わって来ます。
大きな会社と小さな会社の2軸で、どちらが良いかみたいな議論がされることがキャリア選択の中で多いと思うんですけど、僕はそのどっちでもあるしどっちでもないなと思っています。
例えばですが、よくアントレプレナー(起業家)という呼び方は一般的になってきていると思いますが、、僕はイントレプレナー(大企業内起業家)という対比をあえてよく使って説明しています。大企業の中でどうやってゼロイチの新しいものを作るかということについては、大手の会社さんどこでもやっていることですし、社内起業制度もそのうちの1つですよね。SCデジタルメディアやALPHABOATの場合は社内起業ではないですけれども、大企業の資本やリソースを持ち込んで、パートナー企業と一緒になってゼロイチでビジネスを起こしていく。
これは大企業の醍醐味と、アントレプレナーのいわゆるのゼロイチの醍醐味の両方を僕らがかけ合わせた存在だと思います。
総合商社が日本のデジタルや広告、マーケティング、メディアの領域でイントレプレナーシップやっていくんだというのは、すごくマクロの意味ではすごく面白いし、やりがいがあることかなっていう風に思っています。
そうですね。僕もそこにエキサイトメントを感じて入ってきましたし、そのエキサイトメントは、今でも全然変わってないです。もちろん一般論的な意味で、大企業であるところのメリットと同時にデメリットもあると思いますし、ベンチャーやイントレプレナーとしてのメリット・デメリットもあると思います。
ただそこのやりがいとか醍醐味に関しては、どっちの良さもあるかなって思います。
まさにイントレプレナーシップの部分かなって思います。
例えば成長ということでいうと、大企業が対前年比で数パーセント、良くて10パーセントとかの成長が一般的なのに対して、ベンチャーは0からスタートしているので特に最初のフェーズは無限の倍率で成長していくという事ですし、そのあとも下手すれば数百~数千倍で成長するので、成長率で見たときの醍醐味は大企業とは全然違うと思うんですよね。
ただ一方で、イントレプレナーは、ゼロイチの段階でありながら通常のベンチャーではありえない投資をすることができます。
特に人力的な投資が一番大きいです。今のALPHABOATにも、多種多様なプロフェッショナルの方々とご一緒できる機会を多くもらっています。
それってゼロイチのベンチャー時には採用したくても採用できない人材で、それを用意できる。これは大企業のイントレプレナー事業での大きなメリットかなって思います。
あと特に若い方にすごくいいなって思うのは、ベンチャーなのに住友商事の福利厚生を利用できる点です。もしベンチャーに飛び込むことに不安を覚えられている方でも、安心して活躍できる土台が整っていると思います。
ただ一方でやっていることはベンチャーなので、たとえば考えるよりも実際に行動に移していくという事が最も大切になってきます。失敗してもいいから、考えてるよりもまずは実行を大事にやって行きましょうとか、デジタルのスピードに合わせてピボットしながら調整していきましょうとか、そんな部分は他のスタートアップ企業とまったく変わらないので、そういった部分にやりがいを感じる方だったらいいだろうなと思います。
ALPHABOATは、アメリカのFullscreen社がやっているMCN(マルチ・チャンネル・ネットワーク)事業の日本版として創業しました。MCNは全世界で展開しているビジネスモデルで、中でもFullscreen社は言うなれば「老舗」のMCN会社として8年を超える先進的で成功した事例を数多く持つ会社として、全世界でビジネスをしています。
我々ALPHABOATは、元々Fullscreen社のビジネスモデルを日本で展開するというような形で入ってきたんですが、実際にはYouTubeはもちろん、幅広くソーシャルやそれ以外のプラットフォームでのソーシャル・エンターテイメントをお手伝いするなど、アメリカと日本では領域が違う部分があります。
ALPHABOATを一言でいうと「ソーシャル・エンターテイメント・カンパニー」という言い方を今していますが、これは様はソーシャル、つまりYouTubeもFacebookもInstagramもTwitterやTikTokも、すべて含めたソーシャル領域全体の中でどうやってクリエーターと共にコンテンツを作りそこに企業様や商品の熱量をブレンドして、それを視聴者にお届けするか、ということをやっています。
インフルエンサーのキャスティングや動画制作以外にも、熱量の発信の場としてリアルイベントもプロデュースしたりもしています。あとはリサーチですね。インサイトを捕まえる、ということをとても大事にしています。そのため、我々はGen-alpha Labというラボをもっています。Gen-αは元々ジェネレーションαの略で、2010年以降に誕生した、最大で8歳とか9歳それくらいの世代。まだ全然マーケティングの対象としてそこに別にフォーカスをあてるってことではないですが、シンボリックな形でジェネレーションXYZの次にαまで見据えているということで作っています。
実際にはXYZ世代含めて、インサイトを深掘ることを強みにしており、日本の若者からデジタルネイティブ世代のデジタル行動を可視化・検証して動画化したり、クライアントへのレポートなどで、ターゲットがどんな行動をしているのかというのを定性的に捉え、深堀りする、という機能をもっています。
このラボからあがってくるインサイトを活用して実際にキャッチコピーのご提案をしたり、映像を含む様々な表現方法をご提案したり、またはYouTube、TwitterやInstagramといったアカウントの運用についての戦略のご提案などを行っています。
これがなぜ大事かというと、我々が取り組ませていただいている根っこにあるのは「熱量」なんですね。我々はソーシャル・エンターテイメント・カンパニーと言ってますがそれはまさにこの熱量をストーリーテリングに乗せてソーシャルに拡散するエンタメ企業なんです。そのためには色んなインサイトを捕まえることがすごく大事になってくるんです。
もちろん、外部の制作会社さんともかなりご一緒しています。我々は動画制作会社さんではないので、我々の一番の意味・役割は、ソーシャルのアカウントやコンテンツ、キャスティングといった個別部分のご提案はもちろんのこと、ソーシャル全体の考え方や戦略など俯瞰した見立てに基づいた、トータルのソーシャル施策をご提案することです。
我々の主体の目的としては、ソーシャル・エンターテイメント・カンパニーとしてお客様が「ソーシャルでコンテンツやエンタメに乗せてコミュニケーションを取りたい」というニーズに対して、熱量を抽出してそれをストーリー化するという事なので、既存の制作会社さんの領域とはむしろ協業しながらやっていく感じです。我々の役割はどちらかというとインサイトから入って、キャスティングやコンテンツやトータル含めてどうやったらソーシャル上で視聴者に届くようなコンテンツや仕組みを作っていけるのか、みたいなことを一生懸命やっています。
必ずしもデジタルマーケティング領域に強い人だけが集まっているわけではないです。例えば前職で色々なアーティストさんのマーチャンダイジンググッズに携わっていたり、あるいはリアルイベントをオーガナイズしていた仲間もいます。
この人はイベントに強いとか、この人は営業に強いとか、それぞれの強みを活かしていただいています。映画業界出身の仲間だと、映画監督とどんな風にやったらいいタイアップ型のブランデッドコンテンツが作れるか、とか、映画のスクリーンを使ってどう見せたらおもしろいとかって分かってるんですよね。
そうですね。実際、たとえば元MTVの出身のメンバーがブランデッド・ミュージックビデオを作っていたり、あるいはエイベックス社所属のいっくん(Every Little Thingの伊藤一郎さん)と一緒にYouTube番組を制作したりしています。エンターテイメントとして誰もが慣れ親しんでいたものを生み出してきたメンバーが、ソーシャルっていうまた新たな領域でエンタメを生み出して、活躍されています。
ただ、我々はあくまでもソーシャルの場でエンターティンメントができるというのが、感動とかバズりを追いかけるというよりも、ターゲットにきちんと共感性をもって、その熱量が伝わるようなものを、と思っています。そこにストーリーテリングを乗せて、拡散設計をしています。
例えばなんですが、打率100パーセントで必ずバズらせます、とかってそうやって「絶対にバズらせる」事を主眼に置くと必ずズレてくる部分があると思うし、何よりブランドセーフティーとかで「クリエーターの視点とブランド企業の視点」のすり合わせとかがすごく難しい部分がいっぱい出てきちゃうケースも多いと思うんです。そもそもクリエーターとブランド企業の想いが完全に合致するっていうケースの方が稀なんだと思いますし。
それであれば、クリエーターが元々持ってるファンへのリーチ力を「オーガニックなリーチ力」と表現するとしたら、そこにペイドアド=いわゆる広告のチカラを組み合わせて戦略的に考えていくというのがALPHABOATの拡散設計で、その根っこにあるのが熱量をストーリー化するという考え方であり、さらにその前提となるインサイトを捕まえるということの重要性、です。
我々が掲げているビジョンは、なによりもまずソーシャル・エンターテイメント・カンパニーの概念のもと、クリエーターやマーケーターやブランドや企業がもつ様々な「熱量」を、ソーシャルに最適化したエンタメに昇華するストーリーテリング企業であるということ。
もちろん、まだまだ足りない部分が沢山あるので、まずはそこを成り立たせるための努力を日々怠らないようにとは思っています。
バリューに近い意味で言いますと、「social good」です。我々のホームページにもあるように、大きく、ソーシャル・エンターテイメントとこのsocial goodを並記して掲げていて、これを大切にしています。social goodは、和訳するといわば「社会善」といった感じしょうか。
社会善を掲げているからといって、特別に大それたことが必要ではないとは思っていて、例えば友達とか家族、お父さんお母さんとか恋人とか奥さんとか旦那さんとか彼氏とかに胸を張って自分がやっているものを見せられるかどうか、とかそういう視点の方が大事だと思っています。
もちろん会社としてコンプライアンスは当然大事です。でも社会にとっての善いこととかsocial goodとかって、正解がないだけに我々は常に問いかけていくことだ大事だと思っています。
例えばなんですが、昔だったらTV局とか新聞社とかが、いわゆる「考査」とかでコンテンツをきちんと評価して、フェイクなものとかは社会に出していかない様にしていた。でもいま、小さい子供から大人までみんなが楽しんでいるソーシャル上のUGCの中には、誰もチェックする人がいないまま露出しているものが沢山あります。その中には社会に与える悪い影響があるものも、たくさんあると思います。
せっかくALPHABOATとして、大手の住友商事グループとしてこのソーシャルの領域でやっていくなら、社会全体にとって善いことという視点も大事にしていこうねというのが、このsocial goodです。
もちろんエンターテインメントとして成り立っているというのは大前提ですし、それに必ずしも教育的なコンテンツじゃなくてもいいし、上から目線でコンテンツを作るとかではまったくないんですが、いずれにしても「with social good」であるかはどうか、大切にしているバリューです。
正直ソーシャル・コンテンツをつくる、とかソーシャル・エンターテイメントを作るとかいうのは、企業のマーケティング活動全体からみたらまだまだ全然一般的ではありません。まだすごく新しい領域だと思っています。すなわち伸び代がすごく大きい。
我々がソーシャル・エンターテイメント・カンパニーとしてこの領域で、ビジネスとしての成功はもちろんですがそれだけでなく、この黎明期だからこそ日本のマーケットで出来ることが沢山あると思っています。
若い人たちのロールモデルになるようなクリエーターやデジタルタレントさんをどうやって応援するとか、そことブランドセーフティな世界観やコンテンツをどう両立させてつくっていくのかなど、この黎明期だからこそ我々のような会社がお手伝いができればいいなと思っています。もちろん同時に社員がやりたいことが実現した先に、そんなことができるのが理想ですね。